「切り札」使っちゃった?
以前ここで
「渡辺竜王は角換わり腰掛け銀後手番の『秘策』があるかも?」
なんて書いたのですが、なんと竜王戦七番勝負ではなく
「王将リーグの」対羽生名人戦(11月5日)で披露、勝利しました。
定跡どおりに進行して59手目▲1一角に△2八馬、
そこで飛車取り放置で▲4四角成の「富岡流」で先手有望、
と思われていた局面で竜王は▲1一角に△4三銀と1回は面倒を見、
以下▲2五桂△2八馬(この先の手順は書いていない)。
17年前に1局だけ前例がある形とのこと
(以上出典は「渡辺明ブログ」より。「前例」とは1993年3月2日、
第6期竜王戦2組▲中村修七段-△村山聖六段戦と推測。
段位は当時のもの、この将棋は先手が勝っている)。
後手が勝ったことで再び同型の研究が加熱する可能性がありますが
(特に敗れた先手が羽生名人だったという事が大きい)、
自分が気になったのはこの「切り札?」を竜王戦七番勝負ではなく
『王将リーグで使った理由』。
角換わりは先手が受けてくれないと成立しないので
(初手から▲7六歩△8四歩▲2六歩の3手が必要)、
「いつでも使える戦法」ではありません。
しかし、「竜王戦以外では使わない」腹積もりだったのなら
2手目or4手目に△3四歩と突けば後手からも拒否できます。
それでも渡辺竜王が角換わり腰掛け銀先後同型に誘導した理由は一体…?
※無論本心は本人のみぞ知るところなので推測で構いませんが、
「竜王戦でないので負けても構わない作戦を用いた」
「今の羽生名人ならこの程度の作戦でも勝てそうだから」
などという心無い回答は御遠慮下さい。
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自信はかなりあったのでしょうが、実際は違ったらしい!
渡辺竜王のブログでも誤算があったと書かれていた。
竜王戦では仕掛けてきたのは2戦とも羽生側!
今回の将棋で負けてもいいとは思わないでしょうが、
先に仕掛ける将棋も指さないとダメだということでは
ないでしょうか?
渡辺竜王は羽生名人との対戦を「貴重」と表現しています。
相手が仕掛けてきても、自分が仕掛けていっても
満足な将棋になるんでしょう。
あんまり竜王戦がどうとかは考えてないような気がするなぁ。
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3連敗4連勝の竜王戦でもいろいろ新手を出すタイミングとか、対局のめぐりとかあったようですが、
今回の場合、やはり角換わりの秘策はタイトル戦にむけて準備はしていたのではないでしょうか。
竜王戦二局目は矢倉になりましたが△84歩の出だしで羽生さんが誘導すれば角換わりになる将棋で、
おそらくそのときに出そうと思っていたんだと思います。
しかし、矢倉の最新形になってしまいました。
この王将戦も近年タイトル挑戦がない竜王にとっては大切な対局なので切り札を使ってもおかしくない。また、私たちが思っているほど新手=必殺というわけではないですから。
特にいつ使おうとかは決めてない気が…、
それにプロはいくつかの課題の局面試してみたい局面があり、矢倉、角換わりともに戦えると
思ったから△84歩とついたといえるのではないでしょうか。
渡辺竜王が同型を指し続ける理由はわかりませんが今のところ後手がそんな簡単に負けないと思っているのでは。
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タイトル戦を戦っている両者が、タイトル戦の合間に他の棋戦で顔を合わせる、というのは、今回に限らずよくあることです。
そして、そういう対局の結果は、タイトル戦にも大いに影響を与えるものです。ですから、羽生さんも渡辺さんも、今回の将棋に関しては「竜王戦のために力を温存する」などという考えは毛頭なかった、ということです。
羽生さんにしてみれば、直前の竜王戦第2局で先手矢倉で負かされているだけに、同じ戦型は選びずらかった、という面もあるでしょう。対して、渡辺さんがそれを全力で迎え撃った結果が新手披露、という形になった、ということでしょう。
逆に言えば渡辺さんは、現状で角換わりの同形で後手が勝てるのはこの順しかない、と考えているのだと思います。
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